Zama book

2014年02月08日
「貨幣と欲望」佐伯 啓思 著
  新 刊 紹 介 出版社書籍情報ボタン
書籍画像 書籍名 貨幣と欲望
著 者 佐伯 啓思
出版社 筑摩書房 発売日 2013/06/10 価 格 1.400円+税


 著者は、社会経済学・経済思想史を専門とする京都大学大学院教授で、これまでに多くの著書を著し、サントリー学芸賞、東畑記念賞、読売論壇賞等を受賞しています。本書は文庫本ながら445ページに及ぶ大著です。
 


  
 現代はまさに経済のグローバル化時代といわれ、日本企業のグローバル展開も非常に活発化しています。このことは、ただ経済構造の変化というだけではなく、もっと大規模な社会的な転換であり、人々の価値観や生活スタイルまで含めた歴史上の大転換である、ともいわれます。


 しかし、そもそもグローバリズムということそのものが「新しい」事態なのだろうか。経済のグローバリズムは何も二十世紀末の世紀末になっていきなり生じたものではないとして、西欧で近代資本主義が成立し始めた十七、十八世紀のオランダ、イギリス、フランスを中心にした商業の展開もグローバリズムと称してしかるべきものであった。
そしてグローバリズムが明瞭に問題となる次の時期は十九世紀後半から二十世紀初頭の第一次大戦までの帝国主義の時代である。

 本書は、こうした認識を背景にして、重商主義の意味、マックス・ウエーバーとゾンバルトの対立、「ユダヤ資本主義」をどう理解するか、アメリカ資本主義の意味といった論点を展開している。

 そして「本書で私が試みようとすることは一体何なのか。それは強いて言えば、人間の根源的な欲望や精神の反映として経済なるものを理解するということに他ならない」「資本主義の拡張が常に人間の欲望の拡大を伴っている以上、人間の欲望を衝き動かしているものが何であるかを論じることは、資本主義理解には不可欠なはずであろう。」

 「だが一体、それをどのようにして論じればよいのか。経済学がこの役割を完全に放棄している以上、この問題の糸口は、経済学ではなく、むしろ精神分析や哲学、心理学といった方面に求めざるをえないであろう。」と述べている。(ちなみに本書のサブタイトルは「資本主義の精神解剖学」)

 そうした前置きの上で、資本主義の誕生から「市民的資本主義」「ユダヤ的資本主義」「分裂症的資本主義」の系譜をたどり、その中での「貨幣」の役割と人間の欲望との関わりを洞察している。

 アダム・スミス、ケインズ、マックス・ウエーバー、ゾンバルトのみならずニュートン、ニーチェ、フロイト、ユング、ラカン、ハイデッガー、ハンナ・アレント等の論を取り入れた、まさに「資本主義の精神解剖学」である。
 

 そしてアメリカ経済の成功、アメリカ資本主義については次のように述べられている。
 「現代の自由な個人は、伝統的な拘束からも、宗教的抑圧からも自由となった。だが、そうなったとたん、彼は、「経済」なるものに従属することになった。・・・「自由」は、生活の安定と経済的幸福をめぐるものとなったのである。」

 「アメリカ資本主義は、普通の人々に対して、職と賃金とライフスタイルの夢を、つまりそれらの螺旋的な上昇の可能性を提供した。」「あらゆる消費が「ライフスタイル」という社会的評価を基礎としたイメージに還元される。そして消費はすべからく薄められた意味で「象徴的行為」となる。せいぜい「ライフスタイル」という象徴性のもとに個人の想像力は飼いならされる。「私」とは何かといえば「私の生き方(ライフスタイル)」と言う意外にないのだ。」
 


  
 言うまでもなくマーケテイング活動は、資本主義社会のもとで営まれる企業活動なわけですが、その深層には、限りなく増殖し続けている人間の欲望と貨幣の作用の存在があるという意味で示唆に富む内容です。
 余談ですが、文芸評論家三浦雅士氏が「解説」で“名著である”と絶賛しています。

 
(マーケテイング共創協会 座間 忠雄)


  • トップページ
  • これまでのセミナーリスト
  • CMSメンバー企業一覧
  • 講師一覧
  • 派遣講師一覧
  • CMSメンバー制度・申込み
  • お問い合わせ・ご連絡
  • 協会案内